―― 未来詩史の彼方へ
詩集評一覧
2021.12~
ここには人間社とタイアップした詩集企画「人間社✕草原詩社」で2015年以降に刊行した詩書に関する書評・論考等を紹介しています
(下線クリックでPDFファイルが開きます)
●前田珈乱『氷点より深く』
前田さんの詩を眺めていると、美術の展示空間を意味する「ホワイト・キューブ」を連想する。選び抜かれた言葉が積み木のように隙なく配置されている。そんな「箱」の中で、言葉は、自分の置かれた位置から互いに引っ張り合い、躍動しながら、絶妙のバランスを保つ。漢詩に通じる美意識は、彼の大きな特徴だろう。(まるらおこ「静かな佇まいを持った衝動」より)
珈乱は冬に恋し、情念と哲学的思考を融合させる。そして恋の相手、さらには自身とも格闘する。はたして恋は成就し、詩は功を奏するのか。それは本作を味わい尽くした読み手にのみ、明らかにされるだろう。(加勢健一「勝負師は冬に恋し、己と闘う」より)
あらゆる生物が冬眠する中で眠らずに動くヒグマのことを「穴持たず」と呼ぶ。このヒグマは飢えおらず、実は秋に栄養を十分に蓄えることができた個体だ。『氷点より深く』で描かれる女もその身に熱情を蓄えており、ゆえに雪を溶かしつつ恋を求めている。寒い冬でも唇がひどく熱いから、女はそれを冷やし鎮めようと接吻する、雪の白と夜の黒の中で勝負師になる。(渡辺八畳「冬に眠らない女は激しい」より)
●恭仁涼子『アクアリウムの驕り』
恭仁涼子詩集『アクアリウムの驕り』が出た
坂口安吾を読み、無頼の愛に憧れる恭仁涼子は 詩人Nとの偶然の出会いに導かれ
東京神楽坂で奇妙な詩人たちの一団に出会い 自らも詩を書き始める
この詩集は人魚の軌跡 瞼を閉じて読まねば
砂の小粒が目に染みる
●マダムきゃりこ『Rendez-vous』
詩集評(平居謙/雨宮慶子/関根悠介/高菜汁粉/馬野ミキ/宮坂新)
マダムきゃりこ詩集『Rendez-vous』。 それは少し遅めのクリスマスプレゼントのようにやって来た。 クリスマスの日のランデヴー。快楽である。快楽を分かち合うべき友として 雨宮慶子・関根悠介・高菜汁粉・馬野ミキ・宮坂新の各氏に批評を依頼した。 そうしたらエライ事になった。今、彼ら名前を打ち込みながら 稀にみるクセモノばかりにこの批評を頼んでいたことに気付いたのだ。 しかしもう遅い。あとの祭り、アフタークリスマスである。 なんだってこんなツワモノばかりに批評を頼んだのだろう。 ふと思った。 間違いなく マダムきゃりこが呼んだのである。 祈ろう。 遥かな空に飛び去ろうとしている橇よ、堕ちよ。 堕ちて、この詩集の邪気と無邪気とのはざまに宿れ。 ここに集うものの魂と愛憐とを掛けて神へ アーメン